結論から言うと、処方箋なしでコンタクトレンズを購入することは「合法」です。でも、なんでそうなのかを詳しく解説しているところはほとんどないと思います。そこで、ここではかなり詳しく処方箋とコンタクトレンズの関係について解説してみました。6000文字程度のかなりの長文なので、なぜ合法なのかをどうしても知りたいという人だけ読み進めてください。
コンタクトレンズを処方箋なしで通販で購入することは、 法律的に「合法」なんでしょうか? それとも「違法」なんでしょうか? ネットで調べてみると分かると思うのですが、 合法と言う人もいたり、違法と言う人もいます。 「一体どっちなんだろう?」 と混乱してしまう人も少なくないと思います。 そこで、この問題に終止符を打つべく、 詳しく解説しようかと思います。 まず、合法か違法かを知るためには、法律を知らなければいけません。 コンタクトレンズに関する法律は 「薬事法」に書かれています。 ちなみに薬事法と言っていますが、 薬機法と言ったり、改正薬事法と言ったり、 呼び方は様々です。 時代に合わせて改正を重ねてきているからなんですね。 ちなみに、現在の正式名称は 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 です。 長い!
薬事法はインターネット上に全文記載されています。URLはこちらです。
【薬事法全文】 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO145.htmlぜひ、全文読んでみてください。 と言いたいところですが、 これを全文読みこなせる人は少ないと思います。 0%に近いのではないでしょうか。 なので、 必要なところだけを引用しながら解説していきたいと思います。 まず、知りたいのはコンタクトレンズを購入するときに 処方箋は必要かどうかというところですよね。 実は、薬事法の中には「処方箋」という単語は12個しか登場しません。 第9条、第49条、第50条、第83条のみに登場します。 処方箋に関する記述はそれほど多くないんですね。 この中で、購入するとき処方箋が必要かということついて書かれているのは 第49条1項です。
薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
「処方箋の交付を受けた者以外に対して、 正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売してはならない」 と書かれていますね。 ということは、 「コンタクトレンズを購入するときも処方箋が必要になるんじゃないの?」 って思うかもしれませんが、 ここでの注目ポイントは「医薬品」という記述です。 この文章は医薬品に対してのものなんですね。 それも、購入するのに処方箋が必要な「処方箋医薬品」に対してです。 医薬品とは一体なんなのかの定義についても 薬事法の中で記載があります。 第2条1項です。
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
・日本薬局方に収められている物
・人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの
・人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの
医薬品とは「機械器具等でないもの」って書かれていますね。 コンタクトレンズって医薬品なんでしょうか? それとも機械器具等の方でしょうか?
コンタクトレンズって機械ではなさそうですが、 器具っぽいですよね。 そうなんです。 コンタクトレンズは薬事法の中で、 医薬品としては扱われていません。 医療機器(機械器具等)として扱われているんですね。 ちなみに、医療機器についても薬事法の中で定義付けされています。 第2条4項です。
この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
ちなみに、「医療機器」はさらに大きく3つに分類されます。 「一般医療機器」 「管理医療機器」 「高度管理医療機器」の3つです。 実はコンタクトレンズは医療機器の中でも、 高度管理医療機器として位置づけられているんですね。 高度管理医療機器についても、薬事法で定義付けられています。 第2条5項です。
この法律で「高度管理医療機器」とは、医療機器であつて、副作用又は機能の障害が生じた場合において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
ちなみにコンタクトレンズが高度管理医療機器だと指定しているのは 厚生労働省所管の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」というところです。 かなり分かりにくいですが、 こちらのサイトで調べると、 コンタクトレンズが高度管理医療機器だということが分かります。
【独立行政法人 医薬品医療機器総合機構】 http://www.std.pmda.go.jp/高度管理医療機器であるコンタクトレンズの購入には 処方箋の提示は求められるんでしょうか? 高度管理医療機器の販売業についても薬事法に記載があります。 第39条1項です。
高度管理医療機器又は特定保守管理医療機器の販売業又は貸与業の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、高度管理医療機器等を販売し、授与し、若しくは貸与し、若しくは販売、授与若しくは貸与の目的で陳列し、又は高度管理医療機器プログラムを電気通信回線を通じて提供してはならない。
処方箋医薬品みたいに、 処方箋の交付を受けた者以外に販売してはいけないということは書かれていません。 販売する側が許可を受けていることが必要ということしか書かれていないんですね。
つまりは、コンタクトレンズを処方箋なしで購入するということは、 法律的には「合法」です。 販売者側が高度管理医療機器販売業として許可されていない場合は 違法になってしまいますが、 そういうことはほとんどないかと思います。 少なくとも、当サイトで取り扱っている 国内のコンタクトレンズ通販ショップはすべて 高度管理医療機器販売業として許可されているところです。 例えば、 アットスタイルは「札保医許可(機器)第5032号」 クリアコンタクトは「神奈川県知事 許可番号:02210101号」 コンタクトさんは「豊川保 第1000376号」です。 ただ、海外に拠点があるコンタクトレンズ通販ショップの場合は、 個人輸入代行というカタチをとっているため、ちょっと違います。 例えば、レンズモードの場合はシンガポールに会社がありますので、 シンガポール法という法律が適用されることになります。 シンガポール法がどういうものかはちょっと詳しくわかりませんが、 レンズモードはもう十数年も営業していますので おそらくシンガポール法では合法なはずです。 それよりも、個人輸入の場合、 問題となるのはコンタクトレンズが日本国内に入るために税関を通るときです。 日本では薬事法の第65条によって、 日本国内に厚生労働省による承認がない医薬品や医療機器等が出回るのを禁止しています。
薬事法第65条次の各号のいずれかに該当する医療機器は、販売し、貸与し、授与し、若しくは販売、貸与若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列し、又は医療機器プログラムにあつては電気通信回線を通じて提供してはならない。
「次の各号のいずれかに該当する医療機器」というのは、 簡単に言うと厚生労働省による承認がない医療機器ということです。 もしくは偽物とか。 なので、税関では、医薬品や医療機器を通すときには厳しいチェックが入ります。
関税法第70条1項他の法令の規定により輸出又は輸入に関して許可、承認その他の行政機関の処分又はこれに準ずるものを必要とする貨物については、輸出申告又は輸入申告の際、当該許可、承認等を受けている旨を税関に証明しなければならない。【関税法全文】 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO061.html
基本的には、通すには厚生局による「薬監証明」や「輸入届」が必要になります。 でも、個人でのみ使うことを目的とした個人輸入の場合に限り、 一部のものは許可なしでも税関を通すことができます。 実はその一部のものの中にコンタクトレンズが入っているんですね。
【医薬品等の個人輸入について】 http://www.mhlw.go.jp/topics/0104/tp0401-1.html一般の個人が自分で使用するために輸入(いわゆる個人輸入)する場合(海外から持ち帰る場合を含む。)には、原則として、地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局)に必要書類を提出して、営業のための輸入でないことの証明を受ける必要がありますが、以下の範囲内については特例的に、税関の確認を受けたうえで輸入することができます。
医療機器
※ 一般の個人が、医家向けの医療機器の輸入はできません。
● 家庭用医療機器(例えば、電気マッサージ器など)・・・・・1セット
● 使い捨て医療機器(生理用タンポン、使い捨てコンタクトレンズなど)・・・・・2ヶ月分以内
● 体外用診断薬(例えば、排卵検査薬など)・・・・・2ヶ月分以内
ただし、条件付きです。 2ヶ月分以内という条件があります。 ワンデーのコンタクトレンズなら4箱ということですね。 レンズモードではワンデーを8箱注文したとしても、 4箱入りのダンボールが2個届きます。 8箱入りのダンボール1個を送ろうと思うと、 条件を超えてしまい、 薬監証明や輸入届が必要になってしまうからなんですね。 というわけで、レンズモードは高度管理医療機器販売業としての許可はおそらくとっていませんが、 個人輸入代行というカタチによって合法にしています。 ベストレンズも同じです。
法律的にはコンタクトレンズを購入するのに処方箋は必要ないのですが、 コンタクトレンズの購入に処方箋の提示が必要な販売店ってありますよね。 受診した眼科名を伝える必要がある販売店もあります。 例えば、ジョンソン・アンド・ジョンソンのアキュビューオンラインストア。
【アキュビューオンラインストア】 https://store.acuvue.jnj.co.jp/コンタクトレンズメーカー自らが運営している通販サイトですが、 アキュビューオンラインストアでは、 購入するためにアキュビューコードと呼ばれる、 提携眼科にて発行される処方箋の代わりのようなもの?か、 眼科名を記入する必要があります。 法律的には必要ないはずなのに、 なぜ、アキュビューコード(処方箋のようなもの)や受診した眼科名が必要なんでしょうか? それには理由があります。
実は、厚生労働省によるコンタクトレンズの販売に関する通知文書(通達)が存在します。 2012年7月8日に厚生労働省から日本コンタクトレンズ協会に向けられて発行された通知文書です。 「コンタクトレンズの販売時における取扱いについて(薬食発0718第16号)」というものです。 PDFとしてネット上でも公開されています。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/24.7.18.pdfその中に、こういった文章があります。
コンタクトレンズを販売するに当たっては、コンタクトレンズを購入しようとする者に対し、医療機関への受診状況を確認すること。コンタクト レンズの購入者が受診した医療機関の名称については、高度管理医療機器の販売に関する記録に併せて記載し、保存すること。
コンタクトレンズの購入者が受診した医療機関の名称について、 記録しておくことということがハッキリと書かれていますね。 ということは、「コンタクトレンズを購入する時は、 処方箋は必要ないにしても、受診した眼科名は伝えなければいけないんじゃないの?」 って思いますよね。 一体どうなんでしょうか?
ここでひとつ、重要なポイントがあります。 それは、厚生労働省の通知文書は「法律」ではないということです。 薬事法のような法律と違って、 法的拘束力というものは持っていないんですね。 あくまでも、「厚生労働省はこの法律をこういうふうに解釈しているよ」という お知らせのようなもののようです。 なので、コンタクトレンズの販売店が、 購入者が受診した眼科名を記録しなくても、 薬事法にはそういったことが明記されていないので、 違法ということにはならないんです。 厚生労働省の通知文書には違反しているけれども、 薬事法には違反していないので違法ではないということになるんですね。 だからこそ、多くの販売店が処方箋なしで、 かつ、受診した眼科名の確認をせずにコンタクトレンズを販売しています。 ちなみに、アキュビューオンラインストアは、 なぜ、厚生労働省の通知文書に従っているのかというと、 日本コンタクトレンズ協会の正会員という立場もあるかと思います。 それに、もともとジョンソン・アンド・ジョンソンはコンタクトレンズのネット販売に 否定的な態度を示していたという経緯があります。 それが一転して、自身でネット販売を開始するということになったんですね。 眼科からの反発もかなりあったようです。 だからこそ、ネット販売でも極力安全性を確保するために、 厚生労働省の通知文書にあったように、 購入者の受診した眼科名を確認するということ、 さらに、アキュビューコードのような仕組みを作って、 コンタクトレンズ購入者に実際に眼科を受診してもらうように注力しているのだと思います。 ともあれ、ジョンソン・アンド・ジョンソン自身が、 処方箋なしでもコンタクトレンズをネット販売しています。 コンタクトレンズを処方箋なしで通販で買うのは現時点では確実に「合法」なのではないでしょうか。 ただ、合法だからといって眼科を受診せずにいていいわけではありません。 それが原因で眼病にでもなったら、 痛い目に合うのは自分自身です。 定期的な眼科検診は欠かさないようにしましょう。