角膜内皮細胞って一体どんな働きをしているんでしょうか?

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角膜内皮細胞という言葉。聞いたことがあるでしょうか。

コンタクトレンズと目の健康に関する話になると、必ずといってもいいほどでてくる言葉です。角膜内皮細胞って一体どんな働きをしているんでしょうか?

例えるならば「排水ポンプ」みたいなものです。

角膜内皮細胞。例えるならば「排水ポンプ」のような働きをします。

角膜内皮細胞というのは、角膜の中でも、一番内側にある層です。つまりは眼球の内側に面している層ですね。角膜ってだいたい厚みが0.5mmほどの薄い組織なのですが、5つの層によって構成されています。角膜の表面から、「角膜上皮細胞」「ボーマン層」「角膜実質」「デスメ層」「角膜内皮細胞」という順番になっています。

一体「何」を排水するんでしょうか?

角膜内皮細胞は排水ポンプのような働きをすると言いましたが、一体、「何」を排水するというんでしょうか?

角膜という組織は、なんか柔らかそうなイメージがあったりしますが、実際のところは私達の指の爪に似たような硬さをもっているようです。爪って水分を含んでなさそうですが、長風呂をしたりすると、爪の中にも水分が浸透してきたりします。お風呂上がりに爪を切ったことがある人ならわかるのではないでしょうか。お風呂上がりは爪が柔らかくなって切りやすくなっているんです。

角膜はそんな爪とよく似た組織です。つまりは、私達の角膜も、水分が浸透してくるということですね。

眼球の中は「房水」と呼ばれる水分で満たされています。

私達の眼球の中は、「房水」と呼ばれる水分で満たされています。眼球の中央の部分は、硝子体と呼ばれるゼリー状のものだったりするのですが、角膜に接している部分は房水と呼ばれる水分で満たされています。つまりは、その房水が角膜の中に浸透していくのは当たり前と言えます。

角膜内に浸透した「余分」な房水を眼球内に排水するのが角膜内皮細胞。

角膜も、あるていどの水分は必要なのですが、必要以上の水分が浸透してしまうと、だんだんと角膜の透明度が低くなっていってしまいます。角膜の透明度を保つには、細胞がきれいに規則正しく並んでいる必要があるのですが、水分によって膨張してしまったりすると、透明度が落ちていってしまうんですね。

角膜内皮細胞は、角膜の透明度が落ちないように、余計な水分を眼球内に排水するという働きをもっているんです。だからこそ、「排水ポンプ」のようなものと言えるんですね。

排水機能が「衰える」とどうなってしまうのか?

そんな、排水機能をもっている角膜内皮細胞なのですが、排水機能が衰えるということがあります。

角膜内皮細胞って1ミリ平方メートルあたりに、約3000個ぐらいあるのが正常値だと言われています。1ミリ平方メートルあたりを3000個の角膜内皮細胞で支えていると言ってもいいかもしれません。でも、その数が2000個になってしまったらどうなるでしょうか?1つの角膜内皮細胞あたりの負担は大きくなってしまいますね。その数が1000個になったらもっと大変です。正常値の3倍は働かなければいけません。そして、その数が500個になってしまったらどうなるのでしょうか?正常値の6倍は働かなければいけませんよね。

そして、そのあたりが角膜内皮細胞の限界のようなのです。1ミリ平方メートルあたりの角膜内皮細胞の数が500個あたりになってくると、角膜内の水分を眼球内に排水しきれなくなってくるようです。そうして、角膜が水分によって膨張してしまい、角膜の透明度を保てなくなってきます。

その状態を「水疱性角膜症」と呼んだりします。

コンタクトレンズは「酸素」の通しやすさが大事といわれる理由。

角膜内皮細胞の数は、老化によっても減っていくのですが、そのほかの要因によってもその数が減っていったりします。その要因というのが、「酸素不足」です。

目の角膜には血管が通っていません。角膜は透明である必要があるために、血管を通していないんですね。血液には体の組織に酸素を供給するという働きがあるのですが、角膜の場合は血液による酸素補給ができません。では、どうやって酸素を補給するのかというと、空気中から直接酸素をとりこんでいるんですね。

そんな角膜の表面に、コンタクトレンズを装着したりするとどうなるでしょうか?角膜にとりこまれる酸素の量は通常よりも減ってしまいます。そうすると、酸素不足に弱い角膜内皮細胞は死んでしまってその数を減らしてしまいます。

そして、都合の良くないことに、私達の角膜内皮細胞って増えることがありません。減っていく一方なんですね。だからこそ、コンタクトレンズは「酸素」の通しやすさが大事だと言われているんです。

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まとめ

というわけで、角膜内皮細胞がどんな働きをしているのかということについてお話しました。

角膜の透明度を保つという重要な働きをしているんですね。そして、角膜内皮細胞は増えることがないという特徴ももっています。だからこそ、コンタクトレンズはより多くの酸素を通せるように進化してきています。

ちなみに、角膜内皮細胞が減ってしまって水疱性角膜症になってしまうと、角膜内皮移植という手術をおこないます。角膜内皮細胞というのは培養することも難しいといわれていたのですが、最近ではその培養に成功しはじめているようです。培養した「培養ヒト角膜内皮細胞」を使っての角膜内皮移植によって、角膜内皮細胞の数を3500個まで増やすことができたという症例もでています。それまでは、ドナー角膜を使った移植しか選択肢がなかったため、手術を受けたくてもドナー角膜不足によってなかなか受けられないということも多かったようなのですが、今後は改善されるのかもしれません。

とはいえ、できるのであれば角膜内皮移植は受けたくないものです。角膜内皮細胞は大事にしていきましょう。

参考文献

再生医療2017(2)(メディカルビュー社)
「患者まで届いている 水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞を用いた角膜内皮再生医療」

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