なぜ、コンタクトレンズは「酸素」を通すことが重要なのか?

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コンタクトレンズのCMを観ていると、酸素の通しやすさがアピールされていたりします。ほぼ裸眼並みに酸素を通すとか謳われていたりします。それだけ、コンタクトレンズの酸素を通す性能というのは大事だということなのですが、それって一体なぜなんでしょうか?

酸素を「通さない」コンタクトレンズを装着するとどうなるのか?

酸素を通すコンタクトレンズがあるということは、反対に、酸素を通さないコンタクトレンズもあるということです。例えば、昔のハードコンタクトレンズはPMMA(ポリメチルメタクリレート)と呼ばれる素材で作られていました。PMMAというのはアクリルと言ったほうがイメージしやすいかもしれません。

そんなPMMA素材のハードコンタクトレンズ。ほとんど酸素を通さないという特徴があります。そんな、ほとんど酸素を「通さない」コンタクトレンズを装着すると、一体どうなるんでしょうか?

角膜に「血管」が出来たり「白く」濁ったりすることがある。

ほとんど酸素を通さないコンタクトレンズを装着することによる問題点。大きく2つあります。

ひとつめ。角膜に「血管」ができてしまうことがあります。「角膜血管新生」と呼んだりします。私達の目の角膜って、普通は無色透明です。そうでなければ外の世界を目で見ることができなくなってしまいます。そんな無色透明な角膜に、「血管」ができてしまうんですね。黒目の部分の表面に血管ができてしまう感じです。白目の部分には血管はありますが、普通、黒目の部分には血管はありません。自分の黒目を鏡でじっくりと見てみてください。黒目の表面に血管があったら要注意です。

ふたつめは、角膜が「白く」濁ってしまうことがあります。こちらは、「角膜内皮細胞障害」とか「水疱性角膜症」とか呼んだりします。無色透明な角膜が白く濁ってしまったらどうなるでしょうか?当然のことながら視界に影響がでてきます。角膜血管新生の場合は、軽度であれば視界に影響があるようなものではないのですが、白く濁ってしまう場合には、視界も当然のことながら白くモヤがかかったようになります。白内障と似た症状といえるかもしれません。白内障の場合は白く濁る部分が水晶体ですけどね。

ちなみに、水疱性角膜症になってしまったら、白内障よりも治すのは難しいようです。白内障の場合は、水晶体を砕いて、眼内レンズを挿入します。成功率もわりと高い手術です。でも、水疱性角膜症の場合は、角膜移植(角膜全部)をするか、角膜内皮移植(角膜の内皮細胞だけ)をすることになります。成功率は白内障に比べると低くなってしまいます。

角膜は空気中から「直接」酸素をとりこむので、コンタクトレンズがあると息苦しくなる。

なぜ、酸素を通さないコンタクトレンズを装着すると、角膜に「血管」ができたり「白く」濁ってしまうことがあるのかというと、私達の目の角膜って、空気中から「直接」酸素をとりこんでいるからです。私達の体の細胞の多くは、「血液」によって酸素が供給されています。でも、角膜は透明な組織である必要があるために、「血管」が通っていません。なので、空気中から「直接」酸素をとりこむようになっているんですね。

コンタクトレンズって、目の角膜と空気のあいだをさえぎるように装着しますよね。なので、酸素を通さないコンタクトレンズを装着すると、目の角膜は息苦しくなってしまいます。私達だって、鼻と口を押さえられたらとても息苦しいですよね。それと同じことが、目の角膜に起こってしまうんです。酸素を通さないコンタクトレンズを装着すると。角膜に血管ができてしまうのも、血液によって角膜に酸素を供給しようとする「生体防御反応」とも言えるかもしれません。普段は角膜の透明度を保つことが優先されますが、酸素不足になってくると、透明度を犠牲にしてでも酸素供給をすることが優先されるように変化するのかもしれません。

角膜が白く濁ってしまうのも、角膜の「酸素不足」が原因になります。角膜が透明度を保っているのは「角膜内皮細胞」が正常に働いているからです。角膜って実は5つの層に分かれています。上(表面)から、角膜上皮、ボーマン層、角膜実質、デスメ層、角膜内皮細胞、です。眼球の中は「房水」と呼ばれる水分で満たされていますが、角膜内皮細胞はそんな房水によって角膜がふやけてしまわないように、角膜内の水分を調節する働きをもっています。角膜内の水分が多ければ、眼内に汲み出す働きをもっているということですね。

そんな、角膜内皮細胞。酸素不足に弱いんです。酸素不足になると、細胞が死んでしまいます。そして、ここが重要なところです。角膜内皮細胞は「増える」ことはありません。もう一度言います。角膜内皮細胞は「増える」ことがありません。つまりは生まれた時が一番多くて、それ以降は減っていく一方ということですね。そして、角膜内皮細胞は減ってしまうと、その透明度を犠牲にして、細胞のサイズを大きくします。角膜の表面を、少ない細胞数で覆うには、ひとつひとつの細胞が大きくなるしかありません。そうして、角膜が白く濁ってしまう「水疱性角膜症」になってしまうんですね。

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だからこそ、コンタクトレンズは酸素を通すように「進化」してきました。

角膜血管新生と水疱性角膜症を防ぐには、角膜を酸素不足に「させない」ことが重要です。そして、そのためには、コンタクトレンズそのものが酸素を良く通す素材である必要があります。そうやって、コンタクトレンズはより多くの酸素を通せるように進化してきたんですね。

ハードコンタクトレンズでは「PMMA」から「RGPCL(ガス透過性ハードコンタクトレンズ)」に進化、使い捨てコンタクトレンズでは、「HEMA(ハイドロエチルメタクリレート)」から「シリコーンハイドロゲル」に進化しました。

ガス透過性ハードコンタクトレンズやシリコーンハイドロゲルという素材は、ほぼ、裸眼並みに酸素を通すことができます。もっと具体的に言うと、水以上に酸素を通すことができる素材なんです。酸素の通しやすさを「酸素透過性」と呼んだりします。水の酸素透過性はだいたい「80DK」という数字なのですが、ガス透過性ハードコンタクトレンズやシリコーンハイドロゲルの場合、「80DK」以上のものも多いです。

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具体的に「どれくらい」酸素を通せばいいのか?

ちなみに、ガス透過性ハードコンタクトレンズやシリコーンハイドロゲルレンズの中でも、酸素透過性には結構バラツキがあります。使い捨てコンタクトレンズの場合、「60DK」から「140DK」までのバラツキがあります。2倍以上違いますね。また、酸素透過性が同じレンズでも、レンズの厚みが違うと、酸素の通しやすさは変わってきます。レンズが薄いほど酸素を通しやすくなります。

そんな、レンズの厚みも考慮した酸素の通しやすさを「酸素透過率」と呼びます。例えば、酸素透過性が「140DK」だとして、レンズの厚みが「0.08mm」だとすると、酸素透過率は「175DK/L」となります。酸素透過性をレンズ厚で割った数字ですね。Lというのはレンズの厚みのことをあらわします。酸素透過率も、コンタクトレンズによって大きくちがってきます。シリコーンハイドロゲルの場合、「85.7DK/L」から「175DK/L」までのバラツキがあります。

当然のことながら、酸素透過率は高ければ高いほどいいと言えるのですが、ある程度の数字以上になれば、それ以上はあまり違いがないということもあります。酸素透過率の場合、その数字は意外と低くて「87DK/L」以上あれば、ほぼ裸眼並みに酸素を通すことができるといえるようです。シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズであれば、ほぼすべてが裸眼並みに酸素を通すことができるということですね。

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まとめ

というわけで、なぜ、コンタクトレンズは酸素を通すことが重要なのかということについてお話しました。コンタクトレンズが酸素を通しやすくなったおかげで、酸素不足が原因の眼病は確実に減ってきているようです。昔のあまり酸素を通さないコンタクトレンズの場合、装着したまま寝てしまったりすると、角膜へのダメージが大きかったですから。シリコーンハイドロゲル素材の場合はほぼ裸眼並みに酸素を通すので、装着したまま寝てしまっても、それほどのダメージはありません。

とはいえ、細菌などによる感染症による眼病は、酸素を通しやすくなった最近のコンタクトレンズでも、起こり続けています。2ウィークなどのレンズケアが必要なコンタクトレンズを使っている人は、レンズケアも怠らないように気をつけましょう。

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