調節ラグという言葉。聞いたことがありますか?まだまだ、一般的にはあまり知られていない言葉かと思います。一体どんなものなんでしょうか?
簡単に言うと、網膜へのピントが眼球の奥へズレることを「調節ラグ」と言います。
時間がちょっとズレることをタイムラグとか言いませんか?ラグ(lag)というのは一般的には「ズレ」や「遅れ」という意味で使われているようです。私達の目は、水晶体が厚みを調節することによって網膜にピントを合わせています。その水晶体の調節が若干遅れる場合があるんですね。そうすると、ピントが網膜の奥へとちょっとズレます。だから「調節ラグ」と呼ばれているんです。
ちなみに、ピントが網膜よりも前にズレることは「調節リード」と呼びます。
実は、調節ラグが起こると、眼球が奥に伸びるのではないかと言われています。眼球が楕円形みたいなカタチに伸びるということですね。
なぜ、調節ラグがおこると眼球が伸びると言われているんでしょうか?
例えば、プロジェクターをイメージしてみてください。プロジェクターから映像をスクリーンに投影しますよね。ピントを合わせるにはプロジェクター側のレンズを調節するのですが、スクリーンの位置が近すぎる場合、どうしてもピントが合わないこともあるかもしれません。そんなとき、どうしますか?スクリーンの位置を調節するのではないでしょうか?プロジェクターからちょっと遠ざけたりですね。
実は、眼球の中でもそれと同じようなことが起こっているのかもしれないんです。
調節ラグが起こるということは、水晶体の調節力の許容量を超えている可能性があります。そうすると、眼球は網膜の位置そのものを奥へとズラそうとするのではないかと考えられているんです。眼球を奥へと伸ばすことによってです。
調節ラグによって眼球が伸びるのかどうか?
ヒヨコやサルを使った実験が行われています。凹レンズを使って、強制的にピントが網膜の奥に合うようにするんですね。そうすると、つねに調節ラグが起こっているような感じになります。そうすると、やはり眼球が奥に伸びるんだそうです。ヒトとヒヨコとサルではちょっと生体の仕組みが違うかもしれませんが、ヒトの場合にも調節ラグによって眼球が伸びる可能性は大いにありそうです。
眼球が伸びてしまうとなにがいけないんでしょうか?
実は、視力低下の直接的な原因は眼球が「伸びる」ことなんです。昔は、視力低下の原因には2つあると考えられていました。水晶体の厚みを変化させる調節力の低下が原因だと考える「屈折説」。そして、眼球の伸びが原因と考える「眼軸説」の2つです。屈折説の場合、眼球が伸びたとしても、それを上回る調節力があれば問題ないとも考えられますよね。
でも、技術の進歩によって眼軸長を正確に測れるようになった現在、やはり、視力低下の直接的な原因は眼球が伸びることによるということが確実になりつつあるようです。
眼球の伸びを引き起こす「調節ラグ」。
なぜ、生体にはそんなやっかいとも思える機能がそなわってしまっているんでしょうか?それには理由があります。生まれたての赤ちゃんって、目があまり見えていないということは知ってますか?生まれたての赤ちゃんの眼球は、奥行きがとても短くなっているんですね。水晶体をいくら調節してもピントが網膜の奥に合ってしまうという超「遠視」状態なんです。
でも、赤ちゃんは成長するにつれて、だんだんと視力もよくなっていきます。それは、調節力が上がるからではなくて、眼球が伸びていくからです。そして、3〜4歳になるころには正視になると言われています。なぜ、そうなるのかというと、「調節ラグ」が働いているからですね。
赤ちゃんの眼球を、最適な長さに調節する働きのある「調節ラグ」ですが、必要以上に眼球が伸びてしまうと近視になってしまいます。つまりは視力低下します。
調節ラグを極力おこさないようにするにはどうすればいいんでしょうか?
調節ラグというのは、大きな調節力が必要なときに起こります。大きな調節力が必要なときというのは、簡単に言うと、「近く」のものを見るときです。遠くのものを見るときよりも、より大きく光を屈折させないとピントが網膜に合わせられないんですね。そして、調節が遅れると、ピントが網膜の奥側に微妙にズレます。そうして、調節ラグがおこってしまうんですね。
なので、調節ラグを極力おこさないようにするには、近くのものを見る時間をなるべく短くすることです。
とはいえ、現代社会では近くのものを見続ける時間というのはとても長くなっていますよね。仕事でパソコンを使うという人もかなり多いのではないでしょうか。そうすると、近くのものを見る時間を短くするというのはあまり現実的ではありません。
そんなときにオススメなのは、もし、コンタクトレンズを使っているのであれば、度数を下げてみるというのがオススメです。下げすぎもあまりよくないかもしれませんが、視力がだいたい「0.7」から「1.0」ぐらいになるのがいいのではないかと思います。そうすると、度数が高いときよりも、少ない調節力ですむようになるので、調節ラグも起こりにくくなります。
というわけで、「調節ラグ」についてお話しました。
網膜へのピントが奥にズレると、眼球そのものが奥に「伸び」てしまいます。私達の目にはそんな働きがそなわっていたんですね。そして、調節ラグが起こりやすいのは「近く」のものを見続けているときでした。なるべく避けたいものですが、現代社会ではあまり現実的ではありません。
なので、せめて、目にかかる調節力の負担をさげるためにも、視力矯正しているのであれば、度数を下げてみるというのもひとつの手だと思います。