視力の悪さ(近視)って、親から子に遺伝するものなんでしょうか?もし、遺伝だとしたら、どう頑張っても近視の親の子は、視力が悪いことを受け入れなければなりません。実際のところどうなんでしょうか?
視力の悪さは親から子へ遺伝するのか?
それを知るには、まったく同じ遺伝子をもっている人たちを観察すればいいんです。まったく同じ遺伝子をもっている人たちといえば「一卵性双生児」です。親子でも、遺伝子は少しずつ違ってしまいます。兄弟でも少しずつ違います。
でも一卵性の双生児であれば、遺伝子はまったく同じになります。実際に一卵性双生児の視力を観察した実験がおこなわれています。
その結果はどうだったと思いますか?
確かに、一卵性双生児の場合は視力も同じということが多かったそうです。でも、視力が違う一卵性双生児も少なくなく、視力の差が「5.50D」違うという例もあったようです。視力が5.50D違うというのはかなりの差です。片方はまったく視力が悪くもないのに、もう片方は視力が0.1以下とうことになります。同じ遺伝子を持っているのにです。
ちなみに、「二卵性」双生児の視力の観察もおこなわれたようですが、二卵性になると、一卵性よりも視力のバラツキがみられたそうです。二卵性の場合は遺伝子がちょっと違いますからね。
このことから、視力というのは必ずしも「遺伝」だけで決まるものではなくて、「生活環境」によっても大きく左右されるということが言えるようです。
ちなみに「生活環境」ってかなりアバウトですよね。もっと具体的に言うと「近くを見る頻度」と「屋外活動をする頻度」が視力に関わっているのではないかと言われています。特に、外で遊ぶ時間が長い子どもほど視力が良いという研究結果がさまざまな研究グループからだされています。たしかに、外でたくさん遊んでいる子どもほど、メガネをあまりかけていないような気がします。
ただ、なぜ、外で遊ぶことが視力の低下を抑えるのかの理由については、まだまだあまりよく分かっていないようです。
ちなみに、視力が良いことで知られているマサイ族の人たちでも、都市部で生活しはじめると視力が落ちるとも言われています。
自然の中で暮らしていたときには視力が6.0ぐらいある人でも、都市部で生活しはじめると視力が2.0ぐらいに落ちるとも言われているようです。
本当かどうかわかりませんが、確かに屋外活動の時間が視力に関わっているのであれば、そうだったとしても不思議ではないかもしれませんね。
そして、インターネットで視力と遺伝の関係について調べてみると、「視力の悪さは「母親」から子どもに遺伝するのでは?」ということについて書かれたサイトをいくつかみかけます。
その回答としては「わからない」というものが多いのですが、実は、母親の遺伝子が原因となる視力障害があります。「レーベル遺伝性視神経症」という病名なのですが、この病気は母親の遺伝子が原因となって発症するようです。まず、父親の遺伝子が原因となることはないそうです。
レーベル遺伝性視神経症は眼球そのものというよりも視神経の問題なので、一般的な近視とはまったく違うのですが、ここらへんから、視力の悪さは母親の遺伝が関わっていると勘違いされる可能性はあるのかもしれません。
というわけで、視力の悪さは親から子に遺伝するのかどうかというお話をしました。
遺伝も多少なりとも関わっているのですが、それ以上に、生活環境のほうが影響が大きいのではないかと思います。なによりも、今のところ、視力の低下を確実に抑えることができるのは「外で遊ぶ時間を増やす」ということだけのようですので。
ただ、最近では「バイオレットライト」「低濃度アトロピン点眼液」「多焦点コンタクトレンズ」「オルソケラトロジー」などの視力の低下を抑える研究がすすんできています。まだまだ、視力の低下のメカニズムははっきりとは分かっていませんが、近い将来、確実に近視の進行を抑えられる時代がやってくるかもしれません。